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ゲーム創作活動の備忘録、日々の雑記など。

個人制作ネタの考え方

 
インディーでも、サークルでも、チームでもない、
今回は「個人」という制作環境に生きる、作家さんに絞ったおはなしです。
(つまり自分向け)
 
これを考えるきっかけになったのは、こちらのインタビュー記事です。

news.denfaminicogamer.jp

 

とんでもなく長い・・・けど、最後まで読む価値はあります。
「作家」「クリエイター」といわれる立場にある方は、
考え方の基礎になるかもしれません。(当たり前なのかもしれませんが)
 
このインタビュー中で、特に印象的だった言葉を抜粋して、
自分なりの考えを整理してみます。
 
 

1.「描きたいもの」と「描けるもの」

作家には「描きたいもの」と「描けるもの」があるんだよ。
そして、作家が「描きたいもの」は大体コピーなの。
既製品の何かで、その人がそれまでの人生で憧れてきたものでしかない。

 

私の場合、学生時代の1作目が評価されたのは、
今のレベルで「作れるもの」を寝る間を惜しんで作ったからだろうなと、
今さら思いだしました。
そして、2作目に「作りたいもの」になったとたんに、
半端なデキになってしまい、完成すらしなかった。
(就職先が早めに決まって、学生の間に働き始めたという理由もあるが・・・)
10年経ってわかった。そういうことだ。ありがとうマシリトさん。
 
それでも、いきなり「作れるもの」がたくさんあるわけじゃない。
引き出しを増やすためには、コピーをしなければいけない。
基礎を学んでこそ、「型破り」ができるのですね。
密かにコピーを量産して力をつけて、アウトプットでは型破りなものをリリースする。
そうして、他の追随を許さないようなモノを、作れるようになるわけですね。
 
まずは「自分が作れるもの」から、ネタを考えましょう。
そうすると、おのずと「個人で作れる規模」のものになります。
そして、今までうらやましいと思っていた華のある作品たちが、
「とても遠い存在」になると思います。
それらを意識しなくてよくなるぶん、頭の中がスッキリします。
 
こうして自分を追い込んだ先に「自分が作れるもの」が純粋に浮かび上がるはずです。
そして、この「作れるものの枠内で、やりたいこと」をやればいい。
これならできる!
 
 

2.「クローズドな環境」と「有料の場」

コンテンツが生まれるときに、クローズドな環境であることと、有料の場であることは欠かせないんですよ。
でも、インターネットにはその両方がないじゃない。

 

その昔、桜井正博さんがファミ通コラムを書くのをためらった理由として
「アウトプットすればするほど、内なるエネルギーを消費してしまう」
ことを懸念されていたのを思いだしました。
クローズドな環境というのはそういうことだろうか。
SNSにツイートすると満足してブログ書かない、という風に。
 
耐えれば耐えるほど、内なるエネルギーの爆発力は大きくなる。
それが、ものづくりの根源だと、思っています。
満足できる環境からは、革新は生まれない、とも言えます。
なので、自分を追い込む環境を作ることが重要、なわけですね。
プロスポーツ選手からよく聞く話ですし、
小説家の方がホテルに缶詰め、なんてハナシもよく聞きます。

個人制作の場合、積極的に「評価」を受けられないため
目標がブレてしまったり、モチベーションが保てないことが多いですね。
イマドキだと、SNSの発信を生かして自ら評価を受け、反応をもらうことで
モチベーションを維持する手法が推奨されていたりします。

ただしこれは、学習目的や、α版、β版といったある程度の区切りでやるべきでしょう。
創作物は嗜好品であり、消費されるものです。
初めて目にしたときの感動、ワクワク感を演出したい場合は、
初見の爆発力を意識しましょう。
 
 
「有料の場」に関してはインタビュー中では
インターネットコンテンツに対して触れられていますが、
対価が無いと、そもそも作家として生きていけないという点と、
産業として発展しない(誰もやらない)、という点が挙げられます。
趣味ならばタダで結構。
あの伝説級の洞窟物語も、フリーゲームというのがおそろしいですが、
おかげで名前はかなり有名ですね。そういう戦略もなくはない。
 
「無料でうまくやって有料課金に誘導するビジネス」
という手法はいくらでもありますが、今回のテーマから外れるので省略します。
 
また、インターネットコンテンツでも有料のものはありますので、
極論になってしまっていますね。
「苦労して得たものの方が、その人にとっての価値が上がる」
きっと、そういうことが言いたかったのかなと、勝手に解釈しておきます。
 
 
 

3.「ゲームならではの良さ」について

 

インタビュー中では、ドラクエをほめて、FFを否定する内容になっていました。
これについて考えてみたところ、
ゲームの一番のメリットであるインタラクティブ性を捨てて、
映像表現に寄せようとすることに否定的なのでは、と。
これ自体は昔からよく聞く話ですかね。
 
可能性と表現力が広がるのはいいことなんだけれども、ゲームらしさを失っている。
そこが子どもに薦められない要因、ということが言いたいのか、
ご本人が好きじゃない、というだけなのか。
 
デジタルな本、映像、音楽に寄せたコンテンツが増えつつあるので、
「ゲーム」というせまいくくりにするのではなく、
新しいエンタメと捉えたほうがよさそうですね。
 
一方で、インタビュー中ではクロノトリガーの「手触りの良さ」をほめていました。
初めてその意見を聞きましたが、話題になる「ゲームらしいゲーム」って、
やっぱりそこなんだろうなぁと。
手になじむというか。ドラクエにあってFFにないところ。
最近だと、ぱっと思い浮かぶのは
「downwell」や「チュウニズム」は秀逸な手触りでした。
シンプルな内容でも、「手触り」を徹底的に追及することは心がけたいですね。
 
 

4.「まとめ」

 

多人数で制作されているものに憧れるのはいいけれど、
それを「作りたい」と思うのは、危険信号。
 
チームですごいものが生まれるのは、ある意味当然のゴールなのです。
人生の貴重な時間を費やしてまでやることなのか、今一度考えましょう。
 
まずは全く違う世界だと認識すること。
まずは個人で実績を積むこと。
まずは「作れるもの」から作りましょう。
 
 
以上、人生観が変わった、素晴らしいインタビューの感想でした。